アイドルになれないなら死にたい

東京ドブ川ストーリー

目から鱗

朝シャワーを浴びる際に目の下にこびりついた鱗をたわしで洗い落とす。
ああ、いけない、枕カバーにも蒲団にも少し鱗が付着してしまっている。

気づけば床にも数枚の鱗が落ちてしまっている。
今週も忙しいというのに、また掃除しなければならない。

面倒くさいなあ、と思いながら手作業で何枚か拾って行く。

手に取り綺麗だなあと思いながら、ぼんやりと見つめる。
私の鱗は乱反射して、7色に輝いている。

試しに口に含んでみる。
私の鱗だから魚の鱗とは違い生臭くはない。
ただ、おいしくもない。別段いい匂いがするわけでもない。
私のだけだろうか。他の人の鱗は口に含んだことがないからわかりかねる。

ぺっ、と手のひらに鱗を吐き出す。
唾液をまとった鱗はなお一層きらきらと光っていた。
うっとりと見つめる。

排出物の中でも目の鱗が一番美しいと私は思う。

「ねえ、そのアクセサリーとても素敵ね。どこで買ったの?」
「作ったのよ、自分で」
「へえすごいわね」

「自分の鱗で作ったのよ」