アイドルになれないなら死にたい

東京ドブ川ストーリー

歯医者へ行こう

歯医者にて、これ見よがしに歯に詰まっているひき肉(お昼に食べミートソースの一部)を見せられたことが皆さまにはあるだろうか。
幼い頃から歯並びが悪いのがコンプレックスであった。

「矯正は必要ない」という歯医者の言葉をまんまと母親が信じ込み、私は歯並びがたがたのまま大人になってしまった。
同じ製造工場産のはずなのに、姉はとても歯並びが良い。私の何が悪かったのであろうか。

いや、もしかしたらあれが原因だったのかもしれない。
おじいちゃんのことが好きすぎて、お風呂場にある歯ブラシをこっそり使っていたからかもしれない。
(それは後にタイルのカビ取り用の歯ブラシであったと判明するのだが)

いや、それじゃないか。あっちの原因か。
母親とよく舌を絡めたディープキスをしていたからかもしれない。
総差し歯の母親と。
(今母親の口の中からは死体が詰まっているんじゃないかってくらい臭い、怖い)

いや、もうあれだ。
へそを曲げすぎて、歯も根本から曲がってしまっているのだ。
こんなんじゃキスもできない。ディープキスしたときにがたがたの歯でがったがたに相手様を傷つけてしまうんじゃないかと戦々恐々としていた。

私はきたるディープキスに向けて10年ぶりに歯医者に行くことにした。
歯医者は山ほどある。犬も歩け棒に当たるし、人が歩けば歯医者に出くわす。
私はそんな数多なる選択肢の中から、通院のモチベーションを高めるため&挫折しないため、イケメン歯医者さんを選んだのだった。
イケメンの歯医者は見慣れているのであろうか、別に私のかわいい歯並びについては特に触れなかった。
まさか想像はしていたが、ここまで根元がねじ曲がっていやがるとは!
このへそ曲がり!歯の根元ねじ曲がり!と私は恥ずかしくなったのだが。

そして健診後、虫歯の数が言い渡された。7本。
(前歯3本 奥歯4本)

歯並びがたがただから、もっと多いかと思ったが、意外と少なかった。


それから私は2年以上その歯医者に通った。

会社帰りの日も、雨の日も、雪の日も、
時には紹介状を書いてもらい、大学病院で親不知も抜いた。
歯の根元が曲がりに曲がり切っており、抜けば顎に神経麻痺が残るといわれたが、特に後遺症もなく、無事に粉々にされて抜けた。)
私は決してくじけることなく、なんなら喜んで歯医者に2年くらい通った。
今だって定期的にクリーニングに行っているし、今度ホワイトニングもするつもりだ。

別に歯並びはがたがたなままだけど、口内環境はいつだってクリーンなわけで、虫歯も治ったので少しはディープキスへの自信もついた。

そこのあなた!もういつだって私はディープキスできますよ!
あなたの唇傷つけてやりますよ!
このがったがったの歯と捻じ曲がった心でいつだって抱きしめてやりますよ!